三鷹オスカーの最後の夜
1990年12月30日、父が経営していた名画座・三鷹オスカーが閉館した。ここに掲載した写真はその夜の劇場正面の様子である。道に溢れているのは最終上映後の“さよならパーティー”に参加するために集まった人々。先日、実家に帰った際に父が大事にしまっていたファイルの中からこれを出してきた。某新聞社のカメラマンの方が紙上に掲載されなかったこの写真を記念にくれたそうだ。だから、ここに掲載するのは少々権利的に問題があるかもしれない。でも、以前に三鷹オスカーのことを記したところ、いまだにうちの劇場を愛してくれている方々が多数いらっしゃることを知ったので掲載することにした。 続きを読む »
『秒速5センチメートル』と自分

▲ 最近は映画のチケットの半券をいつの間にか無くしてしまう。でも、本作の半券は大事にとっておきたい。
先日、新海誠監督の新作『秒速5センチメートル』を観た。普段はアニメをあまり積極的には観ないのだが、この監督の作品だけは別だ。『ほしのこえ』というインディーズ・アニメがビデオ市場で秘かに人気を博しているという噂を聞きつけてDVDを入手したのは5年前。宇宙と地球に離れた男女の超遠距離恋愛を描いた切ないSFだった。アニメなのに日本のありふれた風景が極めてヴィヴィッドかつセンシティブに描かれているのに心を奪われた。そして同作の映像特典として収録されていた新海監督の処女作『彼女と彼女の猫』はその世界観が横溢した短編だった。この作家の手に掛かるとありふれた風景がとても詩的で鮮烈なものになる。この一枚のDVDですっかり新海誠ワールドに魅了されてしまった。 続きを読む »
老舗の映画館の灯がまた消えた。
5年前の2002年11月に慶應義塾大学の映画同好会が主催する自主映画コンペティションの審査員を務めたことがある。この時の上映会場が神奈川県の藤沢駅前にある映画館・湘南オデヲンだった。東京の大田区育ちで結婚後は埼玉県の浦和に住んでいる私は藤沢にはまったく縁がなく、この湘南オデヲンという映画館もその時初めて知った。この劇場は藤沢の老舗の映画館でビルの中に湘南オデヲン一番館と湘南オデヲン二番館という二つの映画館を持っている。私がそこに到着したのはイベントが始まる30分ほど前だった。劇場を簡単に案内されて私は今日の控え室になる事務所に通された。劇場内は綺麗なのだが、事務所は年季のはいった汚れ方をしていた。父の経営していた三鷹オスカー同様の事務所の雰囲気である。私はこういう雰囲気が大好きだ。 続きを読む »
三鷹オスカーの息子
東京三鷹市の三鷹駅南口にあった映画館「三鷹オスカー」。この名を聞いても、もはやご存知の方も少ないかも知れないが、かつては池袋の文芸坐などと並ぶ名画座だった。他の多くの名画座が週替わり二本立てなのに対して、三鷹オスカーは週替わり三本立てで、料金は一般1,000円、学生800円(閉館時)。しかも毎週、フェリーニ特集、小津安二郎特集、トム・クルーズ特集などとテーマを持った三本立てを組んでいたのが特徴だった。実は、この映画館を経営していたのが私の父である。だから、私はこの劇場が閉館するまでは実兄と共に「三鷹オスカーの息子」とよく呼ばれていた。
初作品は『恐怖のゴトゴト』

▲ (写真は今も持っている8ミリ・フィルム・カメラ、ニコンR-10と映写機ELMO ST-180。稼働するかは不明。)



