寝言

三鷹オスカーの最後の夜

EPSON scanner image 1990年12月30日、父が経営していた名画座・三鷹オスカーが閉館した。ここに掲載した写真はその夜の劇場正面の様子である。道に溢れているのは最終上映後の“さよならパーティー”に参加するために集まった人々。先日、実家に帰った際に父が大事にしまっていたファイルの中からこれを出してきた。某新聞社のカメラマンの方が紙上に掲載されなかったこの写真を記念にくれたそうだ。だから、ここに掲載するのは少々権利的に問題があるかもしれない。でも、以前に三鷹オスカーのことを記したところ、いまだにうちの劇場を愛してくれている方々が多数いらっしゃることを知ったので掲載することにした。この夜は三鷹オスカーとの別れを惜しむ方々が場内で思い思いに酒を酌み交わした。私はこの日が丁度誕生日だったので、酒宴がはじまるとすぐに私の誕生祝いがあった。そして深夜には私の知人が持ち寄った映画予告編集の上映がされた。ただし、映写技師がフィルムの上下を間違えてしまいブルース・ウィリスらの役者たちが天地逆さまで後ろ向きに走ったり跳んだりして場内大爆笑だった。その後の『ロッキー・ホラー・ショー』の上映では人々が壇上に上がり映画に合わせてスクリーンの前で歌い踊った。酒宴は朝まで続いた。途中ですっかり酩酊した私は事務室のソファでひとり寝入ってしまった。目が覚めたのは朝七時くらいだっただろうか。場内を覗くと深夜の喧騒は既に無く、十数名の見知らぬ人々が客席で眠っていた。幸せそうな寝顔だった。うちの劇場は幸福な映画館だったと、その人たちを見ていて思った。そんなことを昨日のことのように覚えている。