寝言

『人造人間キカイダー』のジロー、『リング』の伊熊平八郎博士の俳優・伴大介さんとの24年間。

先日、『人造人間キカイダー』、『イナズマン』そして映画『リング』貞子の育ての親・伊熊平八郎博士の伴大介さんと久しぶりに電話でお話させていただきました。
伴さんとのお付き合いは私の出世作であるビデオ『ほんとにあった怖い話/第二夜』内のワンエピソード『霊のうごめく家』にご出演いただいた時以来で、あれが1991年8月撮影でしたから、この夏で24年になるんですね。『ほん怖/第二夜』の準備をしている最中にプロデューサーが持ってきたキャスティング資料の中に伴さんの資料があって「え? キカイダーが僕の作品に出てくれるんですか?」とプロデューサーの顔を見たら「面白そうだと思ってるみたいよ」という返答だったので即決。子供の時に見ていたギターを持った変身ヒーローが自分の作品に出てくれる。しかも小6の一人娘を持つ普通のお父さん役を演じてくれる。もう、驚きやら嬉しいやらでした。
ところが、『ほん怖/第二夜』は私の監督第二作目で処女作のビデオ『ほん怖』の消化不良を解消しようと「今回は徹底的にリアルな幽霊映画を作るぞ!」というやみくもな気合いだけで撮っていたので、現場で伴さんに「お芝居をしないで」と何度も失礼な事を申し上げてしまったのです。役者さんに「芝居をするな」と注文するというのは「チーズ抜きのピザ」、「タコ抜きのタコ焼き」を注文するようなものですから伴さんは撮影中に「何もしなきゃいいんだろ」と愚痴っていたと他の役者さんから終了後に教えられました。
私としては「幽霊は曖昧な存在なので役者さんが目立つ芝居をしてしまうと、最も重要な幽霊の存在感が薄くなってしまう」という演出プランからの注文だったのですけど、当時の私はそれをご理解いただけるように説明出来ずに「芝居をしないで!」と連呼していたのです。それでは役者さんがへそを曲げてしまうのも仕方が無い。でも、伴さんは私のその無礼に耐えてくださって無事に撮影を終えました。
そして完成した『霊のうごめく家』の伴さんのお芝居はこちらの狙いを120%表現したものでしたし、作品そのものも我ながら充分に納得出来ました。
その後、私は機会があると伴さんに声を掛けました。相変わらずの低予算のオリジナルビデオ(ビデオ専用映画)ばかりでしたが、快く出演してくれました。
映画よりも格が低いと言われ、多くの人が一気に見てくれるテレビほどの訴求力も無いビデオ作品なので評価を得るのにかなりの時間を要しましたけど、時が経つにつれて各方面から賞賛の声をいただく機会が増えて、結果として伴さんは映画『リング』一作目で伊熊平八郎役にキャスティングされ、私も3作目『リング0』で監督に抜擢いただきました。まさか東宝配給の角川映画の大スクリーンのために伴さんのアップを撮る日が来るとは思っていなかったので、35ミリフィルムのカメラを伴さんの目の前に据えてそのお芝居を撮影した時は感無量というか、感慨深かったですね。
また、『リング0』撮影中に仲間由紀恵ほかの私がはじめてお付き合いする役者さんたちに「この監督は鶴田マジックがあるから絶対に信用できるよ」とおっしゃってくださり、ありがたかったな。
伴さんはキカイダーの頃からハワイでも人気で、数年前からは人気が再燃して日本と米国を行き来していらっしゃり、なかなか私の作品とのスケジュールが合わずご出演をいただいていないのですが、また近いうちに一緒に仕事が出来ればいいなと願うばかりです。 簡単に記そうと思ったのですが長々と書いてしまいました。まあ、24年の歴史がありますから、お許しください。

伴大介公式サイト ↓
http://bandaisuke.com/