寝言

傑作『ハッピーフライト』!

 先月、釜山国際映画祭に招待された際に、いち早く『ハッピーフライト』を観た。ただし、自作『おろち』を差し置いて他人の作品に言及するのははばかれたので、今まで黙っていたのだが『ハッピーフライト』は傑作だった。欲を言えば綾瀬はるかさん(『ほん怖』ではお世話になりました!)の後半での活躍シーンが欲しかった。でも、これだけ粋で楽しくてスリルがあってスケール感もあって、さらに映画的躍動感に溢れた日本映画は観たことがない。むろん、『ウォーターボーイズ』も『スウィングガールズ』も面白かった。だけど、やっぱりこの2作はこぢんまりとしていた。一転して『ハッピーフライト』はハリウッドの良くできた娯楽大作に匹敵するエンターテインメントだ。まあ、そこまでお金は掛かっていないにしても、見終わった後はとても贅沢で幸福な気分になった。ひとえに矢口監督の努力と才能のたまものだろう。そして、それを実現させたアルタミラピクチャーズの桝井プロデューサーの仕事にもただただ感服するばかりだった。実はこのお二人とはテレビ『学校の怪談』でお付き合いがあったのだが(現在は年賀状のやり取り程度です)、そんな身近に接したことがある人がこういう素晴らしい仕事をすると嬉しい。そして同じ映画人として悔しい。ところで、この作品に対して期待したほどに笑えないと不満を漏らす人がいるようだが、矢口監督は娯楽映画作家でありコメディ作家ではないと思う。だから、そんな不満はお門違いだと言いたい。1999年に『学校の怪談/たたりスペシャル』でご一緒した時にホラー演出について私に様々な質問を浴びせてくるので驚いたことがあった。要は矢口監督は笑いであろうが、恐怖であろうが人を楽しませることに全精力を傾けている映画作家なのだ。ご本人がどう思っているかは知らないが、矢口監督は希代の娯楽映画作家であり、演劇的手法で映画を撮っている他のコメディ作家さんとは根本的に違う。とにかく、『ハッピーフライト』に感激したのでその気持ちを記しておきたかった。私も頑張ろ。