寝言

三宅隆太の映画監督デビュー作『呪怨 白い老女』を観た。

 今年で10周年になるテレビ『ほん怖』を第一回目から主に脚本で支えてくれている三宅隆太くんとは、かれこれ16、7年の付き合いになる。大学生だった彼に「ファンなんです」と、あるパーティで声を掛けられたのが出会いである。まだJホラーどころか心霊ホラーという言葉さえもない時代だったから、私は大いに励まされた。黒沢清監督、高橋洋さんらがビデオ『ほん怖』を賞賛しているのを知ったのはその後のことだから、私にとって三宅くんは鶴田作品の最初のファンで最大の理解者だった。その後、彼は私のホラー作品を真似た自主映画を何本か創って見せてくれてプロの映画作家として活動したいと言ってきた。そこで、1999年に『ほん怖』のテレビ化の話が持ち上がったときにフジテレビに紹介をして参加してもらうことになった。また、鶴田の短編ホラーの中でも最も満足する一本である池脇千鶴主演『学校の怪談/何かが憑いている』の脚本も書いてくれた。その他、映画『案山子/KAKASHI』の脚本にも協力してもらったし、私が『怪談新耳袋』の依頼を受けたときもプロデューサーに紹介をした。そんな事情で三宅くんには失礼ながら、私にとってはなんとなく弟子のような存在に感じてしまうのである。ただ、それだけにそろそろ彼の一本立ちの映画が観たくてしょうがなかったのだが、それがやっとかなった。

 『ほん怖』同様に今年で10周年となる『呪怨』を記念して作られた『呪怨 白い老女』は、『呪怨』のフォーマットと世界観を忠実に守りながらも、登場人物たちの背景を描き込んで『呪怨』らしからぬラストに持ち込んでいた。感服だった。しかも、清水崇監督の明晰な頭脳が生んだ『呪怨』は時制と視点をずらすのが決まりとなっているので、気をつけないと構造だけの映画に陥ってしまうのに、三宅監督はその罠にはまらずに主人公の少女や彼女と接点を持つ家族の心にも踏み込んでいた。立派なものだと思う。さらに、三宅監督作の短編で評価の高かった『怪談耳袋/姿見』の恐怖をてらうことなく使い回してまんまと観客にショックを与えている。このしたたかさが凄い。私などは一度うまくいった演出を再度試みて失敗してしまうのが常である。三宅監督は同じ演出を再現してちゃんと効果を上げているのだから見事だ。大したものだ。
 とにもかくにも、三宅隆太の本格的な映画監督としての第一歩を確かに感じられる作品であるのが嬉しかった。おめでとう! 三宅くん!

※『呪怨 白い老女』は『呪怨 黒い少女』と二本立てで6月27日より公開。
公式サイトはこちら↓
http://www.juon2009.jp/

『案山子/kakashi』の脚本執筆中の私と三宅隆太くん。二人ともなにげに若い。(00年11月、鶴田の仕事場にて)。

『案山子/kakashi』の脚本執筆中の私と三宅隆太くん。二人ともなにげに若い。(00年11月、鶴田の仕事場にて)。