自分もある意味、今回のジャニーズ問題の被害者でもあり加害者でもあるので、どうも様々な記事に目が行ってしまいます。
某テレビ局プロデューサーから「ジャニーズを主演にしたいから、主人公の女子高生を男子に書き直して」と依頼されて、数ヶ月掛けて書き上げた脚本を仕方なく書き直した経験があると以前記しました。つまり、自分もある意味、今回の大問題の被害者でもあり加害者でもあるので、どうも様々な記事に目が行ってしまいます。
なお、お断りしておきますが、そのようなプロデューサーの強要でジャニーズのタレントさんや、元所属されていた方と仕事をした場合でも、その個人は皆さん、本当に優秀な方ばかりでした。ですから、タレントさん個人には感謝するばかりです。
さて、色々な報道を見るとジャニーズ事務所とPR会社の事前打ち合わせで「ガス抜きが必要」とか、「ビジネスの話を先にする」とかやり取りをしていたそうですが、東山社長、井ノ原副社長を含めたジャニーズ事務所関係者は、2日の会見を「新会社設立発表の場」をメインに捉えていて、「9月7日の会見では具体性の無かった前任者の犯罪行為へのあらためての謝罪や、被害者への補償や救済、それに企業としてのガバナンスの方針発表」などは軽く考えていたとしか思えません。あの会見を見ていて、「新会社設立の話題」になったらお二人とも妙に弾んだ声になっていました。もちろん、東山社長も井ノ原副社長も被害者である可能性もあるし、前任者の不祥事ではあります。しかし、不祥事が発覚した企業の責任者になった以上は、マスコミからどんな質問を受けても真摯に答えて、ひたすら謝罪をして、「このような事が二度と起きない具体的な方策として新会社設立」を語るべき会見だったはずです。
20年以上前ですが、山一証券廃業の際の社長が、「私らが悪いんです。社員は悪くありません」と泣きながら会見を開いた時に、「泣き落としをするんじゃないよ」と若かった自分は思ったものでした。でも実は、この社長は前任者らが数千億円の巨額の負債を作っている事を知らずに社長に就任して、その数ヶ月後に廃業に追い込まれたわけです。後にそれを知った自分は「この人は立派だったんだな」と思い直しました。
逆に、今回のジャニーズ会見では、井ノ原副社長の「子供達が見てるから」発言や、「NGリスト発覚」で、「雪印集団食中毒事件」での「俺は寝てないんだ」と社長が発言したことに匹敵する残念さしか無くなってしまいました。あの時、雪印製品を買う気が失せてしまったように、旧ジャニーズ所属のタレントさんのイメージもダウンしてしまう気がします。先に記した通りで所属タレントさん個人は優秀な方ばかりなので、それは切ないです。
東山氏も井ノ原氏もタレント出身で企業経営には不慣れでしょうが、責任者の立場を引き受けてしまった以上は今後しっかり対応してもらいたいと願います。
ちなみに、もう終わった事だけど、冒頭に記したテレビ局プロデューサーからはジャニーズ事務所に限らず大手芸能事務所に合わせて脚本やプロット改訂の変更を強要されたのは1回だけでなく常態化してました。しかも人気の役者をキャスティングできないと脚本料やプロット料を支払ってもらえないという事も頻繁に起きていました。自分にとっては大事な企画だったので本当に複雑な思いと辛い決断でしたが、その仕事から手を引く事にした次第です。ただし、その後、何年か掛けて支払ってはもらいましたが……。
大きな力を持った側が理不尽な事を「個人」や「弱者」に強要してくるのは世の常でしょう。しかし、今回のジャニーズ事務所とそれを取り巻いた大手企業の姿勢が引き起こした問題は、性加害というだけでなく日本のメディアやエンタメ産業全体にはびこっている様々なハラスメントを露呈させたことになると思うので、今後それらが改善されることを願うばかりです。




