寝言

私がVHSリリースしたアカデミー賞作品 『ハーツ・アンド・マインズ』、まさかの劇場公開!

当「寝言」のページの熱心な読者の方なら覚えていらっしゃるだろうが(そんな人はいないか?)、2006年2月17日『実はサラリーマンでした』の項に、私がHRSフナイというビデオソフト会社に勤めて洋画の国内向けビデオ発売業務をしていた事を記した。そして、1974年度の米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した『ハーツ・アンド・マインズ/真実のプラトーン』というベトナム戦争の記録映画を会社を強引に説き伏せてリリースさせたのは当時の自慢だったとも記した。
なんと、この作品が今月から日本初劇場公開される。タイトルは少し変わって『ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実』。私がHRSフナイ時代にリリースした時はまだオリバー・ストーン監督『プラトーン』の米国アカデミー賞作品賞受賞の熱が冷めていない頃だったので、あのような副題になったのだが『ベトナム戦争の真実』の方が本作を的確に表している。これを観るとアメリカがいかに馬鹿げたことをやっていたかがよく分かる。当時のソビエトもそうだろうが、大国の思惑や一方的政策で関係のない国の庶民が残虐に殺されてしまう人間社会というのはなんなのかと暗澹たる気分になる。そして、戦争は生き残った人間をも破壊し、それを仕掛けた大国にも深い傷を残す狂気でしかない事も思い知らされる。
今回は私が22年前にVHSでリリースしたプリントとは異なりデジタル修復されたプリントでの上映になる。正直、これだけ綺麗だと36年の時間など飛び越えて生々しくメッセージが伝わってくる。あくまでも私見だが、米国を正当化した前提で作られてアカデミー賞を受賞した『ハート・ロッカー』を観た後に本作を観ると、結局、米国は何も反省していない気がする。古い作品ではあるがここに焼き付けられているものは、これからも永遠に事ある毎に確認しければならないだろう。だから、今の若い人たちにも是非観てもらいたい作品だ。それに作品のメッセージ性に関係なく、構成、演出、編集が実に巧みな作品なので、映画作家を目指す若人には、その点だけでも絶対の必見作だ。
なお、本作を配給する映画会社エデンの代表で映画評論家でもある江戸木純氏とはかつてビデオソフト産業がニューメディアとしてもてはやされて急成長を遂げていた20余年前に時には手を取り合い、時にはライバルと目しながらお互い骨身を削って映画、ビデオ業界のために走り回っていた仲である。その江戸木氏の手によって『ハーツ・アンド・マインズ』が公開されるのはなんとも嬉しい。

『ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実』は『ウインター・ソルジャー/ベトナム帰還兵の告白』と2本立てで下記劇場にて上映。 6/19(土)?7/16(金)東京都写真美術館ホール http://www.eigademiru.com/top/

『ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実』は『ウインター・ソルジャー/ベトナム帰還兵の告白』と2本立てで下記劇場にて上映。 6/19(土)?7/16(金)東京都写真美術館ホール
http://www.eigademiru.com/top/