自分の仕事に自信を持って取り組んでいくしかない。
一年間、試行錯誤を繰り返していたホラー映画の脚本を書き上げて関係者にファイル送信をしたのは3月11日の早朝だった。その後しばらく休んで午後になってから一部で意思表明したゾンビ映画『コリン』の本格的リメイクの可能性について関係者と電話で打ち合わせている最中に揺れが襲ってきた。既に小学校から帰って来ていた娘も含めて幸い私の家族には何事もなかった。だが、その後にテレビで中継される生々しい映像や被害報告に唖然とし、さらには対応が後手後手に回る原発事故の状況報告に心底不安と恐怖を感じた。一方、自衛隊や消防庁などの危険を顧みずに原発に挑む人々の姿に涙が出た。
さて、自分に目を向けてみれば取り急ぎ出来る範囲で義援金を寄付したものの、ホラー専門監督である事が呪わしくなった。この時期にホラーは不適切ではないか。しかし、大震災の日に脱稿した脚本は、関係者が私の意図をよく理解してくれているので、とどこおりなく完成できれば自分の映画の中では最も怖い作品にできる自信がある。下火になったJホラーを再注目させ、この様な不幸に見舞われてもくじけない日本の力を世界にアピールできるかも知れないと自負さえしている。自分に与えられた能力で仕事をこなす事に罪の意識を感じる必要はないだろう。そう考えて自信を持って仕事に取り組んでいく事にした。
今はただただ被災地の一刻も早い復興を祈るばかりだ。