寝言

奇跡のノーカット日本語吹替版収録のBD『パリは燃えているか』(1966年製作)に感激!

1975年初テレビ放映とその後の再放映の音声をミックスさせた奇跡のノーカット日本語吹替を収録したBD『パリは燃えているか』(1966年製作)の発売に歓喜して騒いでいたら、サンプルを頂いてしまった。
早速173分を堪能したが、字幕のみのDVDを再見した時よりもやはり圧倒的に面白い。もちろん画質も素晴らしいです。
自分も歳を重ねて自国以外の人々の気持ちも、若い頃よりは理解できるようになったつもりですが、フランス人のパリ解放の歓びは字幕で見るよりも日本語吹替えで観た方が身近に感じられます。
ただし、この作品はゴア・ヴィダルとフランシス・フォード・コッポラという米国人と、『大人は判ってくれない』の仏国脚本家マルセル・ムーシーなどが脚本を書き、『鉄路の戦い』、『禁じられた遊び』のルネ・クレマン監督が挑んだものの、製作当時のフランス政権の検閲とも言える内容への介入でクリエイター達の思うようには作れなかった作品で、オールスターキャストでパリ解放の表面をなぞったにとどまってしまった印象なのがいささか残念。
「フランスの巨匠であるルネ・クレマンともあろう監督が、なぜドイツのコルティッツ将軍に肩入れするような演出をしたのか、私には理解できない」と後年、コッポラが述懐していたのを何かで読んだのをよく覚えています。
封入の解説を読むと「パリ解放に貢献したのは、私達だ」と、当時のド・ゴール大統領一派とフランス共産党が主張して、その両方の主張を映画製作に反映させないとならなくなったとの事。
おそらく、とにかく映画を完成させることを選んだのであろうルネ・クレマン監督は、フランスの登場人物に関しては中庸に描かざるを得なくなった。
その反面、ドイツの登場人物に関しては口出しをする者がいなかったので、ヒトラーに「パリを破壊しろ! 燃やせ!」と命令されているものの、「敗戦に決まっているのにそんな必要ないだろ」と内心考えていたドイツ国防軍コルティッツ将軍の葛藤の描写に、ルネ・クレマン監督は力が入ってしまったのではないか、と今回見返して思いました。
まあ、原作を未読なので、偉そうなことは言えないけど……。
『史上最大の作戦』的なハリウッド戦争大作を期待すると、そこまでのドンパチ映画ではないので、物足りないでしょうけど、当時の仏国と米国の大スターが大挙出演しているのを見るだけでも目の保養になります。
『サイコ』の名演以来、ひ弱で神経質なイメージのアンソニー・パーキンスがバズーカを担いで走り回るのは眼福だし、『ボルサリーノ』以前の、若きベルモンドとドロンの2ショットが見られるのも感動です。
ただ、ベルモンドは山田康雄だけど、アラン・ドロンは野沢那智じゃないのがちょっとあれですが……。
長々と書いていて思い出したのですが、コッポラは本作の脚本を書いたことで、「ハリウッドの連中は、私が戦争に詳しいと思ったらしいんだ」という理由で『パットン大戦車軍団』の脚本を任される事になったそうです。
ですが、本当のところは戦争にもパットンにも詳しくなかったので、図書館で様々な文献を慌てて読んで調べたそうな。結果、パットンは変人だと思ったので、それを分かりやすく描くために、脚本の冒頭に星条旗をバックにパットンが永遠と演説するシーンを入れたら、20世紀FOXに「なんだ! この変な脚本は!」と一蹴されてクビに。
ところが、数年後にコッポラの知らないうちに『パットン大戦車軍団』がその脚本で撮影されて、しかもアカデミー賞脚本賞にノミネートされたので、『ゴッドファーザー』の監督に起用された。
そんな話も思い出しました。
ちなみに、『パットン大戦車軍団』の脚本はノミネートだけでなく、アカデミー賞を受賞しましたね。
『パリは燃えているか』ノーカット吹替版の45年ぶりの再見に、つい興奮して長くなりましたが、このBDは3月3日発売予定です。