寝言

フランソワ・トリュフォー『華氏451』は凄い!

コロナ禍と猛暑と、それとは無関係の問題で気力が下がり気味に。
買い物があってショッピングモールに行ったらワゴンセールでDVDがどれも500円。ディスクがAVラックから溢れている最近はなるべく買わないようにしているのだけど、やはりそこは性分であさってしまい見つけたのがフランソワ・トリュフォーの『華氏451』。
子供の時にテレビで見て面白いと思わなかったので、それっきりになっていた作品。
トリュフォー自身が「失敗作」とか「主演のオスカー・ウェルナーがわがまますぎてうまくいかなかった」とか言っていた記憶があったのでそれも再見から遠ざけてました。
で、締め切り目前の仕事があるので、家に帰って昼食をとりながら冒頭だけ見て止めるつもりだったのだけど、見始めたら止まらなくなってしまった。
相当にすごい映画だと思う。どこがどうすごいかの詳細を書き出すときりが無いのですが……。
本作はブラッドベリのSF小説の映画化で、書物が禁じられた未来社会の物語。
で、人間はテレビや写真、文字の無い漫画などから知識や情報を得ているわけですけど、主人公の家に置いてあるテレビは50型くらいの16:9かビスタサイズのワイドテレビなのです。
それで、このテレビが家庭と双方向で繋がっている。
1966年製作だからまだカラーテレビでさえ普及していない頃ですからね。原作未読なんですが、ブラッドベリの小説に既にこういった描写があったようですね。
あと、トリュフォーらしい実験的演出が横溢しているのだけど、その中でも目を見張るのが「逆回撮影」。映画の中では逆回動作が日常なのに、主人公のオスカー・ウェルナーが本を読むことに目覚めてしまうと逆回での動作が出来なくなってしまう。生粋のシネフィル、トリュフォーらしい発想で、最高です。
クリストファー・ノーランの新作『テネット』の「逆回撮影」が『華氏451』から何かしらヒントを得ているのか、それとも全く違うコンセプトなのか、そこを考えながら『テネット』を鑑賞する楽しみも増えました。
それと、ジュリー・クリスティに明確な理由もなく二役をやらせているのも凄い。
あと、未来感のあるモノレールですね。登場するモノレールはフランスで作られた試験線なので今は存在していないそうだけど、日本の「湘南モノレール」と「千葉都市モノレール」はこの発展型とのこと。
SFとしてはゴダールの『アルファビル』に通じる感じがあるのだけど、製作日誌が書籍になった『ある映画の物語』を読むとやはり『アルファビル』を意識している感じはありますね。準備中にゴダールがトリュフォーの宿泊先に遊びに来てたとも製作日誌に書いてあるし。
電子書籍で『ある映画の物語』が売られていたので、これもつい買ってしまいました。
余談だけど、ジャン・ルノワールの傑作『ゲームの規則』は初公開時は全く不評で興行も惨敗だったというのを初めて知りました。
『ある映画の物語』は、締め切り目前の原稿を書き終わったらじっくり読みます。
ということで、トリュフォーの『華氏451』のおかげでかなり元気になりました。
さて、仕事を頑張らないと!

IMG_7823-300x225-1  ダウンロード