【追悼】大映のスター女優、藤村志保様とご一緒できた至福の20分間。
藤村志保さんの訃報。
2001年の「ゆうばりファンタ」に参加した際、藤村さんが特別ゲストでいらしていて、ホテルから会場へのバス移動の間、幸運にも隣の席に座らせて頂いて20分ほどお話しができました。
憧れの藤村志保さんにお会いできて舞いあがった自分は、私の祖父が大映東京撮影所の所長だったとお会いした瞬間にお伝えしたので、藤村さんのマネージャーさんが気を利かせてくれて、隣に座らせてくださったのです。姑息だったとは思いますが、お許し頂きたいです。
藤村さんは祖父の事も覚えていてくださり、とにかく大映時代の事を懐かしくお話をしてくださって本当に至福の時でした。
そして、私は「藤村さん主演の『怪談雪女郎』が雪女映画の最高傑作だと思います。本当に美しかったし、素敵な内容でした」とお伝えすると、少し照れたように「ありがとうございます」とお礼を言ってくださいました。
以下、話はズレるのですが、翌年の2002年、フジテレビの竹中直人さん主演の『怪談百物語』というテレビシリーズの1話を私が演出することになったのです。その時、プロデューサーから、「怪談物で何かやりたいものはないですか?」と尋ねられたので、私は藤村さんにお会いしたこともあったので、「雪女をやりたいです」と答えて、『怪談雪女郎』をオマージュしたプロットを書いて提出したら運良く企画が通ったわけです。
その後、プロデューサーから「制作は映像京都です」と聞かされてビックリ。なにしろ、元・大映京都の西岡善信さん率いる制作会社ですからね。
私のプロットを元に脚本は高木登=三宅隆太という最強コンビに任せて、雪女は松雪泰子さんが演じることになり、撮影は大カメラマン、江原祥二さん、監督補で山下智彦監督が入ってくれるという本当に贅沢な布陣。『怪談雪女郎』と全く同じ特撮ショットをやりたいと言ったら映像京都の皆さんが嬉々として取り組んでくださったのも最高に嬉しかったです。なにしろ『怪談雪女郎』を作った本家ですからね。
そして、完成した『怪談百物語/雪女』(出演:松雪泰子、萩原聖人、甲本雅裕、竹中直人)は、自分の最高傑作のひとつだと思っています。映画じゃなかったのがつくづく残念ですが……。
放映日が決まった時に、藤村さんの事務所に失礼かと思いつつも手紙を送りました。きっと観てくださったと思っています。
その後、ご縁はありませんでしたが、深くお礼を申し上げます。
私が言うのはおこがましいですが、大映の人気スターとして活躍して頂いたことで、鶴田家は生活が出来たわけですのであらためて深く感謝いたします。
そして何よりも映画ファンを楽しませて頂いたことに、深く深くお礼を申し上げます。
心よりご冥福をお祈りします。