積年の想いを詰め込んだ『悪霊病棟』と尾神琉奈(夏帆)というキャラクター。
私が総監督・脚本を担当した『悪霊病棟』が今週いよいよクライマックスに突入します。
第8話『怨嗟の叫喚』のラストで尾神琉奈(夏帆)があるモノを消してしまいますが、これはJホラーの代表キャラクターの現在についてや、自分自身の積年の想いを表現したものです。
実は8月25日の読売新聞日曜版、中田秀夫監督と『リング』の記事の中で「Jホラーの先駆けは、鶴田法男監督のビデオ版『ほんとにあった怖い話』だが…」の一文がありました。また、5月下旬号の「キネマ旬報」では「Jホラーの立役者は僕じゃない、鶴田さんです」と中田監督が対談の席で私に面と向かっておっしゃってくださいました。
今年は長年のやるせない気持ちが少し和らぎました。
私は中田監督、黒沢清監督、清水崇監督らの様な国際的評価は得られていませんが、良きライバルがいたからここまでやってこられたとあらためて思います。今や夏の風物詩『ほん怖』で鶴田法男の名を知らなくても私の作品を見ている日本人は三監督の国内観客よりも多いはずです。中田監督もハッキリ認めてくださる「Jホラーの先駆者」であるわけですから、今後も日本のホラーの灯を消さないように頑張らないといけないと気持ちも新たにしております。
そんな中で、エイベックス、MBSさんという各企業とお化け屋敷プロデューサー、五味弘文さんが私を信用して『悪霊病棟』をオリジナル・ストーリーで作らせてくださったことに心より感謝しております。
『悪霊病棟』のネタを一部明かすと以前から考えていたアイディアが基になっています(下記「日本映画専門情報サイト」参照)。
今年は中田監督の『クロユリ団地』がヒットし、『貞子3D2』も公開されてJホラーも少し持ち直してきた感じがします。ですが、その人気をかつてのように盛り上げるには様々な挑戦と施策が必要です。正直に言って、Jホラーは粗製濫造されて恐怖表現方法が飽きられてしまったというのが現状でしょう。ですが、60年代に日本初で世界を席巻した怪獣映画は人気が衰退しても、様々なキャラクターを残して現在もそれらは人々に高く認知されています。ですから、Jホラーも恐怖表現や作品性だけでなく、分かりやすいキャラクターを生み出す努力をしていけば、10~20年先でも生き残れるすべがあると考えています。なにぶんにもJホラーが生んだキャラクターは悪役キャラばかりで、善玉がいませんでした。そこでJホラーの善玉キャラを作れないかと長年考えていました。しかし、善玉キャラが登場すると怖くなくなるのは間違いなくその点が非常に難しかったわけです。試行錯誤の連続でしたし、そういう企画を提案しても乗ってくれる製作者さんがいなかった。
しかし、今回、理解のある製作者さんと夏帆という優れた女優さんに巡り会えたことで、その考えを実現できたと思っております。
特に、夏帆ちゃんの卓抜した発想と表現力で、脚本では単に陰気で暗くて泣き虫だった尾神琉奈が愛嬌のあるキャラになったのにはとても感謝しております。
私は前述の思いを込めて『悪霊病棟』と尾神琉奈というキャラを構築しましたが、それに魅力を感じてくださるか、もしくはどう受け止めてくださるかは視聴者や観客の皆さんです。
とにかく、まずは『悪霊病棟』の第8話から最終の第10話までをご覧いただかないと話になりません。
どうぞ、よろしくお願いします。
日本映画専門情報サイト
『POV~呪われたフィルム~』公開記念・鶴田法男監督×石井てるよし監督スペシャル対談
「フェイクとリアルと役者の存在」
http://www.fjmovie.com/main/interview/2012/02_pov.html
『悪霊病棟』公式サイト
http://www.mbs.jp/akuryo/