寝言

原正人プロデューサーを偲んで。

心よりご冥福をお祈りいたします。
まだビデオ販売会社の社員だった80年代中頃、ヘラルド系列会社に何かの商談でお邪魔して待たされている時に、「『未来世紀ブラジル』のメイキング本の『バトル・オブ・ブラジル』を誰か持ってないかな? 直ぐに読みたいんだけど、この辺りの本屋では取り寄せで数日かかるんだよ」と電話をしている声が聞こえたので、そちらを見たら映画雑誌でお顔を存じていた原正人プロデューサーだったのでビックリ。
まあ、ヘラルド系列会社だからいらっしゃるのは当たり前なのだが、こっちは業界に入りたての単なる映画ファンにすぎません。それなのにいきなり目の前に神がいらっしゃっるのが信じられず勝手に死ぬほど緊張しました。
で、「弱ったなぁ」と頭を抱えている原さんに、「あの、僕、『バトル・オブ・ブラジル』持ってます。明日、持ってきましょうか?」とドギマギしながらお伝えしたら、「え? ほんとに? どなたか存じ上げないけどいいんですか?」ということになったので、用は既に終わっていたけど、「明日も新橋に来る用がありますから」と嘯いて翌日、届けたのでした。
その時、「自分は読み終わっているので差し上げます」と一筆書いてお渡ししたけど、4、5日後にお礼の手紙と何かの映画の招待券が同封されて返却されましたね。
それから15年ほど経ってから『リング0』の監督として同作のエグゼブティブプロデューサーである原さんに再会。
『バトル・オブ・ブラジル』の話をしたら、「ごめん。覚えてない」というお話で、まあ、当然だよなと思いましたが、原さんが覚えていなくても、本をお貸しした単なる映画好き青年が監督として再会していることが、自分の中では最高の喜びで勝手に舞いあがっていたものです。
ところが、クランクインして数日後、ちょうど私とスタッフと意見が食い違ってしまい一時間ほど撮影がストップしている現場に、原さんがいらしたので、「大丈夫か……」と心配をおかけしてしまったのが心苦しかったですね。
でも、イマジカ第一試写室の0号試写では朗らかに褒めてくださったので胸をなで下ろしました。
田中好子さんのお芝居に感心されていて、お二人のやり取りを脇から見ていて監督として微笑ましいし誇らしく思ったものです。
しかし、田中好子さんも既に鬼籍に入られている。
原正人様、その節は大変にお世話になりました。ありがとうございました。
香典、弔問などは辞退されていると言うことなので、私ごときのつまらぬ思い出話を記して偲ばせていただきました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3baaa1a3efb339a595b5b9abef7bab9f87befe63/images/000?fbclid=IwAR3Amw-AlfJ7xZgpz1su5mpReda5X1vP2sp7y2234ai-v378VxFI1Rvllm8