寝言

ネットの台頭で思い出す、60年代、非業の死を遂げた、TVスター、丸井太郎。

この記事を読んでいて、1960年代にTVドラマ『図々しい奴』の主演で大人気になったのに、自死してしまった俳優、丸井太郎さんのことをふと思い出した。
TBSドラマ『図々しい奴』は視聴率40%超えの大ヒットで、大映に所属する大部屋俳優でしかなかった丸井太郎は一躍国民的スターになり、テレビ界から出演オファーが殺到。ところが、大映の永田雅一社長の映画へのこだわりや、大映ほか、東宝、松竹、東映などの映画会社に所属する俳優の活動を束縛する「五社協定」なるものがあり、映画会社の俳優は容易にテレビに出演することが出来なかった。そのために、丸井太郎は大映映画の脇役ばかりをあてがわれて、飼い殺し状態に。そして、それを悲観して60年代末にガス自殺をしてしまった。
当時、大きな話題になっていたはずだが、自分はまだ小学3、4年だったのであまり覚えていない。でも、祖父が大映の取締役だった我が家で、暗い表情の家族が何度か「丸井太郎」の名を口にしていたのは記憶している。そして、その数年後に大映倒産に発展。鶴田家内がドタバタになったのは今も鮮明に覚えているが、丸井太郎の自殺のスキャンダルが既に不振に陥っていた大映に追い打ちをかけたのだろうと思う。
Netflixが上陸する少し前、私より一回り若い某TV局プロデューサーと「ネットメディア飛躍」の話題になった時、「ネットはかつてのレンタルビデオみたいなものだ。テレビ屋はテレビだけ考えれば良い、とうちの社長は言っている」とおっしゃった。でも、こっちは映画屋一家に生まれて、レンタルビデオ業界の中枢で働いてメディアとしての限界も目の当たりにしてきた身である。
「ネット配信はレンタルビデオとは絶対に違う」
と考えていたので、大映の永田雅一社長がテレビが台頭してきたときに「日本映画は必ず復興する」と豪語して映画にこだわりすぎたために倒産に追い込まれたことを丸井太郎の自殺を絡めて話をしたらもの凄く嫌がられてしまった。
年の功で善かれと思って伝えたことがプライドを傷つけてしまったようでしたね。でも、耳に痛い話でも過去の事実は受け止めて、将来を見据えないといけないと思うのだが……。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/01291100/

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