寝言

【7日間、映画チャレンジ】『新幹線大爆破』、『ブラック・サンデー』。

【7日間、映画チャレンジ】
●適当にゆる~くやりますので、毎日1本ではなく間が開く日もあるかと思います。
●「#stayhome のバトン疲れ」も報道されているので、お声がけはしないようにします。
●ただし、もしご興味がある方はご連絡をください。
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さて、2日目は、『新幹線大爆破』と『ブラック・サンデー』。

先日、1975年の『新幹線大爆破』がテレビ放映されてSNSが大変に賑わっていましたが、同作を観ると、その2年後に日本公開予定だったジョン・フランケンハイマー監督、ロバート・ショー主演『ブラック・サンデー』を、なんだか思い出してしまうのです。

『新幹線大爆破』は東映が『ポセイドン・アドベンチャー』や『タワーリング・インフェルノ』に対抗して総力を結集して挑んだサスペンス・パニック超大作。
国鉄から協力を拒否されたのに、新幹線の車両の精巧なセットを建て、走行シーンはミニチュアを作り当時は最先端だったシュノーケルカメラを多用して撮影し、どうしても国鉄内で撮影しないとならないショットは身分を偽って盗み撮りをするという今ではあり得ない方法で作ったという裏話には事欠かない作品なのは皆さんご存じでしょう。

健さんを爆弾犯に起用するという意外なキャスティングの他、ワンカットしか登場しない志穂美悦子等など東映スター総出演で、そこに大映テレビの大スター、宇津井健を招き、黒澤明組の志村喬も出演する贅沢ぶりで製作。それなのに撮影日数はたったの5週間、しかも完成したのは公開の3日前だったという、もはやなんだかわからないけど凄い映画。
そして上映開始後、観客の反応は上々だったのに興行的にはすっかり惨敗してしまった不運な作品でもありました。

一方、『ブラック・サンデー』はパラマウント映画の重役で『ある愛の詩』、『ローズマリーの赤ちゃん』、そして『ゴッドファーザー』を手掛け大ヒットメーカーだったロバート・エヴァンスがプロデュースして、1977年初春で米国、夏に日本公開予定だった大期待作。

『新幹線大爆破』は、「新幹線に時速80キロ以下になると爆発する爆弾が仕掛けられた、さあ、どうする!?」という設定だけど、こちらは米国の年に一度の一大イベント、スーパーボール会場に特殊爆弾を搭載した飛行船を突入させて、観戦中の大統領共々8万人の米国市民を抹殺しようとするテロ集団「黒い九月」とイスラエルの特殊部隊モサドの攻防を描いた超絶サスペンス。

フランケンハイマーのダイナミックな演出力が思う存分に生かされて、上映時間2時間23分の後半45分は爆弾を積んだ飛行船とヘリコプターの壮絶な空中追跡劇。
ロバート・ショー扮するモサド大佐の決死の活躍で、ヒッチコック映画10本が束になったようなスリルとサスペンスで胃がひっくり返りそうになるほど。

なんですが、米国では1976年末にユニバーサル映画がラリー・ピアース監督、チャールトン・ヘストン主演『パニック・イン・スタジアム』を公開。フットボール・スタジアムの試合中に無差別殺人をはじめる狙撃犯とSWATとの攻防を描いたサスペンス。これが『ブラック・サンデー』のクライマックスのスーパーボール・スタジアムとイメージがダブってしまって、内容は全く違うのに、大衆には二番煎じに思われてしまい惨敗。

こうなれば、当時、北米に次ぐ映画市場だったら日本にロバート・エヴァンスをはじめパラマウントは期待をしたはず。

ところが、上映予定だった日比谷、有楽座などに「上映するなら爆弾を仕掛ける」という「黒い九月」を名乗る相手から脅迫電話がかかってきたために上映中止になってしまい惨敗どころか、公開もされなかったという史上最悪の不運に見舞われてしまったわけです。

『新幹線大爆破』も『ブラック・サンデー』も、相当に凄いサスペンス大作なのに、こんな結果になってしまったのが一映画ファンとして残念でなりませんでした。

まあ、『ブラック・サンデー』は2011年の「午前十時の映画祭」で上映されましたけど、やはり1977年に有楽座の大スクリーンで観たかったなぁ、というのが本音。

そんなわけで、この2つの作品は似てるなぁと思うのでした。

でも、その後の運命はだいぶ違っていて、『新幹線大爆破』は健さんらの犯人側の過去や環境の描写をバッサリ切り落として、「時速80キロ以下で爆発する爆弾を抱えた新幹線」のサスペンスだけに絞った短縮版が海外に輸出され、特にフランスでは日本映画としては異例の大ヒットに。

そして、1994年の大ヒット作、キアヌ・リーブス主演『スピード』が本作のアイディアの元になっただろうという話しでもいまだに語り草になる作品になっているわけです。
ちなみに、東映は『新幹線大爆破』の翌年に中島貞夫監督、渡瀬恒彦主演で『狂った野獣』というジャックされたバスが失踪する傑作も作ってるから、『スピード』の脚本家グレアム・ヨスト、製作マーク・ゴードン、ヤン・デ・ボン監督らは東映映画を絶対研究して『スピード』を作ったと勝手に確信してます。

そして、佐藤純彌監督はその手腕を評価されて同じく高倉健主演『君よ憤怒の河を渉れ』を元・大映社長、永田雅一プロデュースにより作り、これが中国に輸出されて8億人の中国人が観たというとんでもない大ヒット。その後は、角川映画第二弾『人間の証明』を撮り、『敦煌』や『おろしや国酔夢譚』などの大作を多数手掛け、昨年、鬼籍に入られるまで日本を代表する監督として活躍。

一方、ジョン・フランケンハイマー監督は、『ブラック・サンデー』が不幸な公開、結果になり相当に落ち込んだらしく、以降は精彩を欠いた作品が続き遺作はTVムービーになってしまったのが残念です。遺作を観てないけど。

まあ、映画はやはり運に左右される代物で、作品も人もその結果次第で様々な道を歩んで行く。
当たり前のことかも知れませんが、そんなことをあらためて思いました。
とにかく、目の前の仕事に可能な限り全力投球していくしかないですね。

では、また。
#新幹線大爆破
#ブラックサンデ

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