寝言

『ジョーカー』は現代のマカロニウエスタン?

TV『ローハイド』終了後、人気下降のクリント・イーストウッドを主演に、内容は黒澤明監督『用心棒』をパクって、正統派西部劇に見紛うように作られたイタリア映画『荒野の用心棒』が大ヒットした時の雰囲気はこんな感じだったのだろうか。

上映終了後、若者で満杯の新宿の劇場を見回して、そんなことを思った。

ホアキン・フェニックスはエッジの効いた優れた作品に出てきたけど、この600席近くを埋めている若者のほとんどは今まで知らなかっただろうし、本作がパクったとは言わないが、明らかに意識している『タクシー・ドライバー』や、『キング・オブ・コメディ』も観たことはないだろう。でも、これは「バットマン」、「ワンダーウーマン」などの正統派のDCコミックのキャラクター映画なんだよ。
そう言えば、『ワンダーウーマン』は明らかに『ローマの休日』をパクって、いや、参考にして優れた娯楽映画に仕上げていた。

マーベル=ディズニーが健全なジョン・フォード、ハワード・ホークス、ジョン・スタージェス、ヘンリー・ハサウェイ監督の西部劇だとすると、DC=ワーナーは「不良性感度」抜群なセルジオ・レオーネ、セルジオ・コルブッチ、ドッチョ・テサリ監督らのマカロニ・ウエスタンなノリで進む気なのか。
とすると、今まで見損ねてもさして気にしていなかったDC=ワーナーのすべての作品をしっかり観たくなるし、愛おしくなってしまう。

それと、クリント・イーストウッド監督・主演『許されざる者』が公開された頃は若造だった私などが「凄い映画だ!」と口々に絶賛していたら、淀川長治さんは「こんな映画は昔はごまんとあった。絶賛するあんたらは映画を知らなさすぎる」と発言していて傷付いたけど、今、『ジョーカー』を観て「必見のヤバい映画!」とか言う若造には、スコセッシ=デ・ニーロ作品だけでなく、ハーヴィー・カイテルの『マッド・フィンガー』や『バッド・ルーテナント』、それに、『フェイド・トゥ・ブラック』、『仁義の墓場』、『暴行切り裂きジャック』、『箱の中の女 処女いけにえ』等などを観てから言えよ、と言いたくなってしまう。『ジョーカー』よりも、これらの作品の方が主人公も狂ってるし、描かれる世の中も狂ってますよ。

まあ、しかし、最近は魅力薄だったハリウッド・メジャー作品の中でも『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に続いて語りたくなる映画ではありますね。

ついでに言うなら、世界を制覇したローマ帝国を、カルタゴのハンニバルが蹂躙したように、ハリウッドを制覇しつつあるディズニー帝国をワーナーに蹂躙してもらいたいと記しておきます。
ハリウッド・メジャーが、安心して見られるおさまりの良い映画ばかりでは映画館に行く意欲が失せます。
http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/

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