今年前半は『カメラを止めるな!』だったけど、後半は北村龍平監督『ダウンレンジ』が必見!
『カメラを止めるな!』と同じ無名俳優で作ったインディペンデント映画。今年の前半は『カメ止め』だったけど、後半は北村龍平監督『ダウンレンジ』が絶対の傑作。凄い緊迫感! 情け容赦の無い恐怖! とんでもないラスト! 90分が15分にしか思えないアッという間のジェットコースター・バイオレンス・スリラー! とにかく必見! ただし、R-15のかなりの残虐度なので要注意。
という感じだけど、映画オタクな話をすると、9月6日のプレミアム試写会のトークイベントに招かれた際に、北村龍平監督が「『激突!』、『ヒッチャー』、『悪魔のいけにえ』、『ハロウィン』みたいな映画を作りたかった」と言うので、「僕はジョン・カーペンターの『要塞警察』を真っ先に想起したけど?」と尋ねると「それは、もちろんですよ!」の返答。心ある映画ファンの皆さんは、以上のやり取りでなにがなんでも真っ先に劇場に駆けつけないとならない気持ちになっていただけたでしょう。
もう少しディープな映画にまつわる話をすると、初見の時に私の頭に浮かんだのは「北村龍平はヒッチコックに真正面から挑んだ」という一言。ヒッチコックの傑作の1本『北北西に進路を取れ』の、真っ昼間の広大な畑でケーリー・グラント扮する主人公が殺されそうになるあの名シーンを90分にしたような映画なのです。
さらにもっとディープな映画談義をすると、ベルイマンと並ぶスウェーデンの鬼才と呼ばれたボー・ウィデルベルイ監督の傑作『刑事マルティン・ベック』の後半、ストックホルムのビルの屋上から姿の見えないスナイパーが正確かつ冷酷に警官を延々と射殺しまくるあの緊迫感が90分続くといえばお分かりいただけるでしょう。
残酷描写が苦手な人にはお勧めはしません。ジャンル・ムービーをレベルの低い映画と思われている方にも無理強いはしません。
ですが、業の深い人間ドラマや社会的メッセージを持った映画だけが立派な映画ではありません。普段は理性にコントロールされている本能を刺激するのも「映画」、そして「芸術」の使命です。
ルイス・ブニュエルの『アンダルシアの犬』やパゾリーニの『ソドムの市』などの芸術性を理解できる方ならば是非観て欲しい作品。
東京は15日から、大阪は22日から公開です。
http://downrangethemovie.com/