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8月11日(土) 16:00~放送、フジテレビ『ほんとにあった怖い話 傑作選』作品解説。by 鶴田法男

8月11日(土) 16:00~17:30 放送、フジテレビ『ほんとにあった怖い話 傑作選』のラインナップが発表されました。
私、鶴田法男の演出作品について解説します。

今年の『夏の特別編2018』は脚本で1本参加するだけで、演出含めノータッチです。
フジテレビ『ほんとにあった怖い話 傑作選』公式サイト ←こちら

◆もう1人のエレベーター(2016年)
演出・脚本:鶴田法男、出演:生田絵梨花、生駒里奈、齋藤飛鳥、白石麻衣、西野七瀬
【解説】実は私の行き付けの中華屋のご主人の体験が原作。乃木坂46主演ですが、本当はオジサン1人の体験談です。実際のエレベーターでは撮影が難しいので、某廃墟の廊下にエレベーターだけセットを組んで撮影しました。

『もう一人のエレベーター』セット

『もう一人のエレベーター』セット

◆誘う沼(2016年)
演出:鶴田法男、脚本:酒巻浩史、出演:柳葉敏郎、志尊淳、恒松祐里
【解説】私の知人の「死んだ妻に会った」という体験談を基に「HONKOWA」の一部原作の要素をミックス。池の中にクレーンで足場を下ろし幽霊役者さんに立ってもらいました。
昼の沼から幽霊が出てくるのは1971年の米国の傑作ホラー『呪われたジェシカ』(監督:ジョン・ハンコック、出演:ゾーラ・ランパート)への私のオマージュでもあります。
柳葉敏郎さんはお子さんが『ほん怖』ファンだったので主演を引き受けてくれました。私が演出しやすいように色々な提案もしてくれて大変に助かりました。柳葉さんが幽霊に襲われるシーンの一部のショットは、悲鳴を上げている芝居を声出さずに柳葉さんが演じてくれています。そのお陰で私が望んだショットを撮れました。

『誘う沼』撮影風景

『誘う沼』撮影風景

◆憑依の祠(2015年)
演出・脚本:鶴田法男、出演:中条あやみ
【解説】原作の題名は「閑却の杜」。放映直前にプロデューサーがタイトルを変更。フジテレビ公式サイトではなぜか原作の題名ままで現在も掲載(18年8月10日現在)。
原作はもっと長い話でしたが、その中の夢のエピソードだけを映像化しました。原作を読んだときに学生時代に見た実験映画を突然、思い出してやってみたいとプロデューサーに提案して実現した作品です。その実験映画のタイトルも詳細も忘れましたが、同じことが繰り返す映像なのに、ある瞬間、別の映像が挟み込まれるのがショックだったのだけは覚えていたのです。
中条あやみさんは「『ちゅうじょう』と読まれたり、『あゆみ』と間違えられたりするのが悩みです」と現場で言っていたけど、現在は大活躍ですからもうそんな悩みもないでしょう。

『憑依の祠』セット

『憑依の祠』セット

◆顔の道(2009年)
演出:鶴田法男、脚本:三宅隆太、出演:佐藤健、高橋真唯(現・岩井堂聖子)
【解説】『ほん怖』史上一番怖い作品を一つ選べ、という話になると大抵多くの人が挙げてくる作品がこれ。
原作コミックの鯛夢さんの漫画が本当にインパクト大だったので、それをどうやって映像化するかで苦心惨憺しましたね。
あの顔は2メートル近い造形物を作り、それを路上に置いて撮影をしました。全部をCG合成にしてしまうと質量が感じられないので、本当にデカい顔を現場に置くことにこだわりました。それに、役者さんも怖ろしい物が目の前にあった方が芝居がしやすいはずです。
実際、佐藤健さん、高橋真唯さんの目の前にあの顔を置いた瞬間、2人とも本気でビックリしていました。あの驚きの芝居は素に近いものです。
また、佐藤健さんがあの家に入っていくくだりの演出は1974年の歴史的ホラー映画『悪魔のいけにえ』(監督:トビー・フーパー、出演:マリリン・バーンズ)を参考にしています。
面白かったのは、階段から白装束の女が下りてくるシーンを撮っているときに、女の身体が半分くらい見えた所で佐藤健さんが「監督、僕、もう逃げ出したいんですけど」と言ってきた事でした。演出的には女の身体が全部見えるまでそこに居て欲しい。怪異と主演をからめないと怖くならないからです。しかし、普通の人間心理ならば怖くなった途端に逃げ出したくなるのが自然なわけです。佐藤さんは主演するプロの役者として怖い目に遭っても踏みとどまって観客に伝えることを伝えないとならない責務があるのは分かっている。しかし、リアルに考えると逃げ出した方が自然である。現場に来てこちらが用意した幽霊を実際に見て役者としてこの矛盾にぶつかってしまったので、私にその疑問を素直にぶつけてきたわけです。そこで私は「怖くてもそこに踏みとどまってください。そうしないと視聴者に恐怖感が伝わらない。映画の嘘と言うことでお願いします」と答えたところ、その通りにしてくれました。
「逃げ出したいのに怖くて逃げられない」と書くと簡単ですが、この芝居は、実はかなり難しいです。それを難なくやってくれた佐藤健という役者さんは凄いな、と感心したのを今でもよく覚えています。
その後の『るろうに剣心』シリーズを含めた活躍は皆さんご存じの通りです。 色々なことが非常にうまくいった作品だと自負しています。

『顔の道』ロケハン写真

『顔の道』ロケハン写真

◆姉さん(2004年)
演出:鶴田法男、脚本:長津晴子、出演:岡本綾、田中圭
【解説】この『姉さん』は当時有名になっていた都市伝説を題材にしたものです。残念ながらこの後、女優業を引退してしまった岡本綾さんとは1999年の関西テレビ『学校の怪談 たたりスペシャル』以来の仕事。そして、今をときめく田中圭さんが助演で出ています。
でも、正直な話をするとこのレギュラーシリーズになってからは現場のことを良く覚えていません。
当時、Jホラー人気が最盛期で『ほん怖』がレギュラーシリーズ化されて撮影をした2003年晩秋から2005年早春の間に、映画『予言』を撮り、テレビ朝日『スカイハイ』シリーズにも参加していました。ですから、自分史上最も忙しかった時期で、作品の記憶がゴチャゴチャになっています。
ただし、この『姉さん』はヒッチコックの『レベッカ』の演出を応用したいと思い取り組んだのは鮮明です。映画ファンの方はそれに注目してご覧になってもらえると別の角度から楽しめると思います。

◆深夜の鏡像(2004年)
演出:鶴田法男、脚本:清水達也、出演:神木隆之介
【解説】『深夜の鏡像』はレギュラーシリーズの撮影に入ってまだ3本目くらいに撮った記憶があります。
神木くん(と言っては、もはや失礼ですね)は当時既に天才子役として名を馳せていましたけど、実際、撮影をしてみて「なるほど」という感嘆しかありませんでした。
本作をご覧になると幾つかCGや合成をしていると思われるかも知れませんが、実は一切、CGや合成などは使っていません。現場にマジック・ミラーを用意して、すべてアナログで撮影しました。 当初、私は合成が必要だと思っていたのですが、チーフ助監督の森脇智延が、「監督、これ、一切、合成カットを使わなくていけますよ」と言ってくるので任せてみたら、ほんとに使わないで出来たのでビックリしましたし、森脇の優秀さに感動しました。
森脇智延は現在、監督になり昨年から私の抜けた『ほん怖』を支えてくれています。

では、11日(土)、フジテレビの「傑作選」、そして18日(土)『夏の特別編2018』をお楽しみに。
『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2018』公式サイト←こちら

『恐怖コレクター』公式サイト

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