NEWS

『おろち』撮影現場取材。

2007年の年の瀬も押し詰まった日、東映大orochi_photo01泉撮影所に鶴田監督の撮影現場を訪ねた。
前作「ドリームクルーズ」の現場に伺ってから約1年が過ぎていたが、今回の映画も話題作だった。あの天才漫画家・楳図かずおの名作「おろち」の映画化である。
1969~70年少年サンデーに連載された漫画を、私も毎週怯えながら読んでいた記憶がある。謎の美少女「おろち」がストーリーテラー的に、時を越えて様々な人間の欲や業を見せつけていく流れなのだが、恐怖漫画に括られてはいるものの、どちらかと言えば様々な人間模様を描いた作品とも言える。楳図作品独特のおどろおどろしい画を、鶴田監督がどのような映像にするのか、今から公開が楽しみな映画である。(2008年秋東映系公開予定)
しかし、訪問日が悪かった。その日の朝8時まで撮影だったそうで、監督もややお疲れ気味。他のスタッフもキャストもあまり寝ていないらしく、それがまた恐怖映画の1シーンのように、悪魔に精気を吸い取られた雰囲気を醸し出している。ある意味、映画監督は悪魔なのかもしれない。自らのこだわりを出せば出すほど、まわりの人間の時間と体力が奪われていく訳であるから…、監督自身は練りに練られた脚本のせいにしてはいたが。
その脚本は「リング0」でタッグを組んで、ヒットを生んだ高橋洋氏だから、監督も気が抜けないのだろう。  年内UP予定で進行中だそうだが、かなり押しているらしい。まあ、映像の現場では押さない日なんてそう滅多にあるものではない。どんなに念入りに打合せをして、細かなスケジュールを立てたところで、現場の流れを変えることは難しい。

 orochi_photo03これまた睡眠不足気味がありありと判るプロデューサー氏にステージの中に案内されると、そこに現れたのはまさしく楳図漫画の世界を忠実に表現した古い洋館のセットだった。
しかも、蝋燭の灯がゆらゆらと揺れている。蝋燭ライティングだけでも、時間がかかることがよくわかる。今回は監督自身も初めての3ステージでの大掛かりなセットを組んだということで、そのそれぞれで凝りに凝った映像作りをしていけば、時間がなくなっていくのは致し方ないだろう。プロデューサーの立場で考えれば、原作よりおぞましいことではある。
「あきらめたカットも何カットかあります。でも、もう仕方ないですから」
監督も映画と言う悪魔に精気を吸い取られているようだが、ファイルムが回り始めれば今日もまたのめり込んで行くのだろう。
残念ながら、木村佳乃・中越典子・谷村美月といった豪華美人女優陣にはお目にかかれなかったが、とにかく無事にクランクアップを迎えて、一日も早く試写に呼んでいただきたい。健闘を祈っています。

取材:“関口渉”1957年2月19日生まれ
TV-CMを中心とした映像プロデューサーとして活動。主な作品にJRA、伊藤ハム、劇場公開用映画「十三通目の手紙」など、他多数。