吉本興業、岡本社長の会見を見てどうにも納得できないな。
吉本興業さんの芸人さんや役者さんと仕事をしたことはありますけど、それ以上のお付き合いはありません。しかし、どうも今回の件は同じエンタメ業界で仕事をしてきた者としてなんとも納得が出来ない部分がありますね。
要するに北野武さんがおっしゃっていた「芸人は猿回しの猿なんだから、その猿が粗相をやらかしたときに、猿が謝っても世間は納得しない。猿を回していた猿回しが謝らないと世間は納得しない。それなのに、猿に謝罪会見をやらせてしまった。これはダメだ」ということですよね。
そして、田村亮さんが「ファミリーならば、僕たちは子供で、その子供が世間に謝りたいと言っているのに、親はそれを許してくれない。そんな親はないでしょう」という事でもありますよね。
宮迫博之さんや田村亮さんらが責任者の会社に嘘をついたのが元々の問題だけど、その責任者が「お前らが謝ったら会社全体の信用が無くなるから黙ってろ。謝りたいなら会社を辞めてからにしろ。そうすれば、会社の責任ではなくなるからな」と受け取れるやり方をしてしまったからこじれてしまった。
中井貴一さんが「新潮45」で「昨今の過剰なコンプライアンス遵守に苦言を呈する」という寄稿をしてましたけど、エンタメとか芸の世界はやはり一般常識では計れないから面白いのであって、常識的だったり品行方正では面白くないんですよね。
チャールズ・チャップリン、ハロルド・ロイド、バスター・キートン、ジャッキー・チェン、今はトム・クルーズもその仲間かもしれませんが、一歩間違えば死ぬスタントをやってるから我々を魅了するわけです。でも、普通はこんな危険なことはやらせないですよね。
アーティストやクリエイターが日常生活ではあり得ない奇想天外なものを見せてくれたり、普段では気づけない物事の視点や考え方を提示してくれるから観客はその芸や作品にお金を払った甲斐があると思うわけですよね。
観客を楽しませるためには、多少は危ない橋を渡らないとならない。足を踏み外す事だってある。その時は所属する事務所や企業が守ってやらないとならない。そうしないと芸が身につかないし、新しい発想の創作物も生まれない。
昔の映画界とか、そんな怪しいことばかりだったんですけどね。
もちろん、明らかに違法なことをしてしまった場合はこれは救いようがない。
でも、今回のように芸人が犯罪を犯したわけではなく曖昧な部分がある場合には、「うちの不出来な息子が粗相をしでかしてすみません」とまずは一緒に謝るのがエンタメ企業の責任者のあるべき姿だと思うのです。ビルの屋上で立ち回りをやっていたら下に落ちて通行人にぶつかって怪我をさせてしまった。そしたら、「そんな危ないところで立ち回りをやったお前が悪い。会社は知らないよ」と対応されたら、それは辛いですよね。
所属事務所がまるで政界のトカゲの尻尾切りのような対応をしてきたら、なんのための事務所なのかと不満を持ちますよね。
再度記しますが、今回の件は、同じエンタメ業界に身を置く者として納得できなくなってしまいます。