寝言

北村龍平監督『ダウンレンジ』の一ファンとして、上映が連日満杯になることを祈る。

この記事を読んでいて、先日の『ダウンレンジ』のイベント試写で北村龍平監督から聞いた製作までの苦労話を思い出した。当初は生粋の米国映画として作るつもりで動いていたのだけど、「スナイパーがターバンを巻いていれば、この企画は話題になる。それなら金を出す」と米国の某プロデューサーに言われて、「そんな映画を作りたいわけじゃない」と拒否。米国のプロデューサーは諦めて、日本の信頼できる真木太郎プロデューサーに連絡を入れた、という裏話を教えてもらった。
社会的メッセージを持った素晴らしい映画もあるけど、作り手の闇雲な衝動で作られたエンターテイメント映画が史上最高の娯楽芸術だと私は思う。
昔、TVムービー『激突!』が世界的な評価を受けた時に「追われる自家用車が米国で、追ってくるタンクローリーは米国を猛追してくる様々な国々のメタファーである」などという批評が書かれてスピルバーグが困惑したという記事を読んだ。結局、作品が面白ければ、作り手の意思に関係なく観客が様々に膨らませてくれる。
実は、優れた映画とは観客がそれぞれに完成させるものなのだ。
素晴らしいメッセージ、優れた人間ドラマ、人気の役者や有名な原作の映画ももちろん良いけど、「観客に凄い体験をさせてやりたい」という衝動をむき出しにし、しかし、作家の独りよがりに陥っていないエンタメ映画に出会うと本当に嬉しい。
『ダウンレンジ』の一ファンとして、本日からの上映が連日満杯になることを祈るのみ。

http://www.enterjam.com/?p=229451

「ダウンレンジ」エンタジャム