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『ほん怖 傑作選』:『廃屋の少女』、『叫ぶ廃病院』、『夕暮れの迷子』、『闇からの電話』解説。

18日(土)『夏の特別編2018』放映を前に、Twitterのほんとにあった怖い話[非公式]さんが、各ローカル局の『ほんとにあった怖い話 傑作選』のラインナップを投稿されていたので、それを基に私、鶴田法男の演出作品ほかについて、「思い出話」や「裏話」など記しておきます。

今年の『夏の特別編2018』は脚本で1本参加するだけで、演出含めノータッチです。

フジテレビ『ほんとにあった怖い話 傑作選』公式サイト ←こちら
【傑作選情報】

サガテレビ 8/17(金)25:25〜26:25

◆『廃屋の少女』(2004年)

演出:鶴田法男 脚本:玉城悟 出演:和希沙也

【解説】フジテレビ系で2004年1月10日から始まったレギュラーシリーズの記念すべき第一回目の第一話として放映されたのがこの作品。深夜、殺人事件があったという廃屋に侵入して怪談話に興じていた若者たちの目の前に、着物姿の子供が這って現れて・・・。この原作を読んだときに「これは怖い!」と思って直ぐに映像化の準備に取りかかりましたね。

 

◆『叫ぶ廃病院』(2010年)

演出:鶴田法男 脚本:三宅隆太 出演:溝端淳平 中尾明慶 岡本玲

【解説】ビデオ映画『ほん怖』からのファンはシリーズ三作目『新・ほんとにあった怖い話/幽幻界』内『廃屋の黒髪』のリメイクと勘違いされる方がいらっしゃるのですが、原作は全く異なります。ですが、男2人、女1人の若者3人が心霊スポットの廃病院に侵入するのは同じなので、勘違いをされても無理はありません。

廃病院になぜか壊れた仏壇があり、帰りの車の中になぜか位牌があるというのが、怖いのだけどちょっと可笑しくて映像化をすることになった原作でした。
ちなみに、『ほん怖』ファン、ホラー・ファンならばこの廃病院の外観が『真夜中の徘徊者』(主演:阿部寛)と同じである事や、私のTBS・MBS系ドラマ『悪霊病棟』(主演:夏帆)、映画『王様ゲーム』(主演:熊井友理奈、鈴木愛理)ほか、多数のホラー映画で舞台になったところであるのはお気づきでしょう。静岡県にあった廃墟で「ホラー映画の聖地」と呼ばれていましたたが、数年前に解体されて現在は全く新しい施設が建っています。

『叫ぶ廃病院』ロケ場所

『叫ぶ廃病院』ロケ場所

◆『夕暮れの迷子』(2004年)

演出:鶴田法男 脚本:清水達也 出演:柊瑠美

【解説】記念すべき2004年のレギュラーシリーズの第一回目の最終話として放映されたのがこの作品。『千と千尋の神隠し』の千尋役の柊瑠美さんがとても良かったし、迷子役の少年が非常に上手くて怖い話ではない心温まる話なのだけど、個人的にはとても好きな作品です。あの少年がヨダレを垂らして泣くのが印象深かったけど、考えてみたら助監督だった森脇智延の演出が非常に上手かった部分もあるな。

実は、これに引き続いて『スカイハイ2』の第7話『タイムカプセル』を撮ることが決まっていたのですが、主人公が中学生でキャスティングに悩んでいたときに、テレビ朝日に柊瑠美さんを推したら話が通ったので嬉しかったですね。

『夕暮れの迷子』ロケハン写真(助監督時代の森脇智延)

『夕暮れの迷子』ロケハン写真(助監督時代の森脇智延)

◆『闇からの電話』(2003年)

演出:鶴田法男 脚本:高木登、三宅隆太 出演:えなりかずき 綾瀬はるか 庄司智春

【解説】2003年4月8日に『ほんとにあった怖い話/春の恐怖ミステリー』と題して『オープニング~婆、去れ』(主演:内山理名)と本作、そして『父の想い』(主演:井川遥)の3作が1時間スペシャル番組としてフジテレビで放映されました。実はこの1時間という変則的な枠で放映されたのは、フジテレビ内でこの枠が突然に空いてしまったからでした。どんな事情があったかを私は知るよしもありません。ですが、忘れもしない2003年2月末にフジテレビ後藤プロデューサーから突然、電話がかかってきて「1時間の枠が空いてるんだけど『ほん怖』をなんとか作ってみませんか?」というので「え? 1ヶ月強しかないのに本気ですか?」と返すと「ええ、なんとかなるでしょう」という返答だったので、「分かりました。やりましょう」と即答したのを鮮明に覚えています。要するに「ピンチをチャンスに変える」というやつに賭けてみようと思ったのです。

話がずれますけど、1960年の米国のB級映画『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』が撮影日数2日間、製作費300万円くらいで作ったのにヒットして、1982年にブロードウェイでミュージカル化されて再びヒット。さらにこのミュージカルが1986年に映画化されてヒット。このブロードウェイ・ミュージカルと映画版の音楽を担当したのがアラン・メンケンとハワード・アッシュマン。この二人の仕事を評価したディズニーがミュージカル・アニメ『リトル・マーメイド』の音楽に起用して1989年、本作が公開されると大ヒットしアカデミー賞作曲賞も受賞。これが基点となり、以後、二人が手がけた『美女と野獣』、『アラジン』などが次々とヒットしてディズニーが躍進した。なんてサクセスストーリーに昔から憧れていたので、1ヶ月強で『ほん怖』を完成させて放映させれば、これは1960年の『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』みたいなサクセスストーリーが待っているかも知れないとワクワクして挑んだ次第でした。

突貫工事で作り宣伝もほとんど出来なかったのに、結果は12.0%の高視聴率を取り、この成功が翌年のレギュラー・シリーズ化に繋がりました。前述のハリウッドの様な大成功や躍進ではありませんけど、この時に尻込みしていたら、今年19年目になるフジテレビ『ほん怖』は無かったでしょうし、自分のキャリアも随分と違っていたと思います。

なお、綾瀬はるかさんはこの時に脇役ではじめて出ていただき、その後『横断歩道奇譚』、そして10周年スペシャル『怨みの代償』で主演してもらいました。

『恐怖コレクター』公式サイト

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