回想録 鶴田が語る、ほん怖のあれこれ
Episode9 深夜ドラマの企画が亀山千広さんの一言で、いきなりゴールデンに。

 フジテレビ後藤さんがプロデューサーとして『ほん怖』のテレビドラマ化企画を練りはじめたのは1999年の年頭だった。ただし、私がゼロから企画を組み立てたビデオ版とは異なりテレビ版は後藤さんが企画書を作成し私は要所要所でサジェスチョンをする程度だった。だから、後藤さんの様々な苦労は存じ上げないし、私はこのテレビ版が成立した詳細を知らない。ただし、ひとつだけよく覚えていることがある。それは、後藤さんも私もテレビ版『ほん怖』を当初は深夜のレギュラー番組として考えていたのだが、当時、後藤さんの上司だった亀山千広さんがその企画書を見て「これはゴールデンだ」と言ったのがきっかけで、いきなり金曜21時からの2時間ドラマになったことだった。

 さて、普通ならば深夜ドラマよりもゴールデンの方が監督としては嬉しいだろう。しかし、私は悩んだ。先述の通りビデオ版はリアリティを出すために無名キャストで作って成功をおさめていたからだ。だから、テレビ版も無名キャストで作るべきだと思っていた。ところが、ゴールデンになれば人気スターを揃えないとならない。果たしてそれで良いのか。しかし、私が愛してやまない『フレンチ・コネクション』はジーン・ハックマンやロイ・シャイダーがスターになった後に見返しても圧倒的なリアリティがあったわけで、結局、映画やテレビドラマのリアリティとは役者の有名無名だけの問題ではないと思うに至り悩むのをやめた。結果、フジテレビ『ほん怖』は、池脇千鶴さん、黒木瞳さん、杉本哲太さん、稲垣吾郎さん、中山美穂さん(出演順)という超豪華キャストのオムニバスになり、私はその中の3話を担当した。視聴率は18.8%の高視聴率を獲得。そして、翌年の『2』は19.1%に上った。

(続)