そんなある日、ビデオ雑誌の編集者から『幽霊の名所案内』という30分の企画物ビデオが意外な人気があると聞かされた。これはいわゆる心霊スポット紹介作品の先駆で、DVD時代になった現在でも同種の物は連綿と作られている。その後、とあるレンタルビデオ店に取材をしてみると何の期待もしないで仕入れたのに『幽霊の名所案内』は確かに高い回転率を誇っているという。それを聞いて、「現代日本を舞台にした怪談映画」という漠然とした考えを実現させる土壌は確実にあると思った。ただし、映画ではなくてビデオ作品としてである。「ホラーは当たらない」と言われていた時代に映画を仕掛けるのは高望みだと思った。どんな仕事でも同じだが、自分の出来る範囲から一歩一歩積み重ねた方が得策だ。とにかく、その「現代日本を舞台にした怪談映画」を具体化するために本格的な企画を考えることにした。問題はネタだった。
(続)