回想録 鶴田が語る、ほん怖のあれこれ
Episode2 「『ほん怖』をテレビ化したらどうですか?」が発端。

 後藤さんとは渋谷のスタジオで会うことになった。そこでフジテレビのロゴの入った名刺をもらっても、この人は何か勘違いをしているのではないかとまだ半信半疑だった。ただその後、色々と話をしているうちに、この8歳年下の男性は昔から怪談が好きで、この年に映画『リング』がヒットした現状であれば怖い番組を作れるのではないかと真剣に考えていることが分かった。そして、その思いを形にするべくビデオレンタル店で最近のホラー系の日本映画やオリジナル・ビデオを片っ端から観たそうだ。その中で面白いと思ったのが、全て私の作品だったという。しかも彼は、雑誌『ユリイカ』などを読んでおらず高橋洋さんや黒沢清監督らの私への評価を知らずに連絡をくれたのである。私の作品を観ずに、もしくは観ても面白いと思っていないのに連絡をくれるプロデューサーがたまにいるのだが、そういう人とは全く違う後藤さんの真摯な姿勢を私は心底嬉しく思った。とにかく、この人を100%信用しよう、そう心に決めた。
 しかし困ったことがあった。後藤さんは怖い番組を作りたいのだが、具体的にどんな番組を作ったらいいのかが分からないという。実は当時、私は映画版の『ほんとにあった怖い話』を作りたいと思い数年前に脚本を書き上げていたのだが、一向に映画化のめどが立たなかった。そこで、『ほん怖』がテレビ化されれば映画化の道も開けるのではないかと考えた。そう思った瞬間に私は後藤さんに提案をしていた。
 「『ほんとにあった怖い話』をテレビ化したらどうですか?」
 それが今年10周年を迎えるフジテレビ『ほん怖』の発端である。

(続)