回想録 鶴田が語る、ほん怖のあれこれ
Episode1 最初はフジテレビからの電話が信じられなかった

 「はじめまして。フジテレビの後藤と申しますが、鶴田監督ですか?」と私の携帯に突然電話が掛かってきたのは1998年末の寒い夕暮れ時だった。私は「フジテレビの人から、なぜ電話が掛かってくるのだろう」と耳を疑った。なにしろその頃の私は、ビデオ『ほんとにあった怖い話』をはじめとした低予算オリジナル・ビデオ(ビデオ専用映画)と『ゴト師株式会社』という単館公開の映画しか実績がなかった。テレビ『学校の怪談』や映画『リング0〜バースデイ〜』のオファーを受けるのはこの後である。だから、フジテレビなどという大テレビ局の人から直接電話が掛かってくるなんてことは何かの間違いだと思った。
 いや、正確に記すとこの年のはじめにヒットした映画『リング』の脚本家の高橋洋さんや監督の中田秀夫さんがインタビューなどで私のビデオ『ほんとにあった怖い話』他の作品について言及している記事を目にしていた。さらに夏には、雑誌『ユリイカ』の怪談特集で高橋洋さんと監督の黒沢清さんとの鼎談に一度は断ったものの結局引っ張り出されていた。自分が以前にはない注目を浴びていると薄々感じてはいた。しかし、それはあくまでも一部の人の注目に過ぎないと思っていた。転機というのは突然にやってきて当の本人には把握し難いものなのだ。
 ただし、このフジテレビの後藤さんという人は高橋洋さんらのインタビューを読んでいる様子はなかった。ただ、とても丁寧な口調で今までの私のホラー作品を観て興味を持ったというのである。最初は訝しく思っていた私だったが、それを聞いて「とにかく、一度この人に会ってみるか」と心の中でつぶやいていた。
 結局、これがフジテレビ『ほん怖』を立ち上げたプロデューサーで、現在は企画として番組を支えている後藤博幸さんとのお付き合いの始まりになった。

(続)

ほんとにあった怖い話

『ゴト師株式会社』
(劇場映画/1993年公開)

ほんとにあった怖い話 第二夜

『悪霊怪談 呪われた美女たち』
(オリジナルビデオ/1996年発売)

新・ほんとにあった怖い話 幽幻界

『亡霊学級』
(オリジナルビデオ/1996年発売)